環境省 環境研究総合推進費 希少植物・絶滅危惧植物の持続可能な域外保全ネットワークの構築

これまでの業績

キブネダイオウの域外保全集団づくり@京都市立鞍馬小学校

 このプロジェクトでの最後の域外保全集団づくりを迎えました。地元京都の絶滅危惧IA類のキブネダイオウです。

 育てて頂くのは、すぐ側を貴船川が流れる地元の鞍馬小学校です。まず前の週に、京都府立植物園の長澤園長と平塚係長、松波さん(+瀬戸口)で植える場所の設営をしました。


ツルハシで固い地盤を起こして、ロックソイルを敷いて完成です。

 そして3月6日に児童と教職員の皆様にキブネダイオウの苗を植えて頂きました。全部で36個体です。


いつも通りに個体毎にQRコードをつけて、皆さんのニックネームを登録しました。

 此処に育つキブネダイオウは5月には花を咲かせてたくさんの種子を実らせることでしょう。

 フェンスで鹿から守られたキブネダイオウが、鞍馬小学校を拠点にして復活するように願っています。
 貴船川では京大スタッフの服部さんと中川さんが流域一帯の外来種と雑種の除去をしてくれました。あとは鹿の対策をどのようにするかが野生復帰のポイントになります。

今年も咲きました

 未記載のカンアオイが今年も咲きました。周囲の丘陵に工場が建ったりしているためでしょうか(原因は不明)、自然における個体数が60個体を切っています。幸いにして遺伝的な多様性が高いので、いま地域の方々が進めておられる域外保全集団づくりが特に有効であると思っています。悪意を持った人に盗まれないように、生育に適した環境が雑木林の中で維持されるように、見守りや継続観察が必要です。次のRDB指定の際にはリスト対象外になっているようにしたいものです。

公開シンポジウムの開催

 3年間の研究成果について市民の皆さんを対象にして発表するを1月28日(土曜日)に京都府立植物園にて行いました。予想した以上の人数の方が参加して下さり、あとから部屋の後ろや横に椅子を追加して並べることになりました。京都でもフタバアオイやチマキザサ、フジバカマなどの色々な植物、地域の植生の保全に取り組んでいる皆さんが多く居られます。この推進費で進めてきたことが、少しでも役に立ったり、相互の連携に繋がればと思います。

 なお、このシンポジウムにあたって、「希少植物保全活動の最前線」というタイトルの30ページからなる解説冊子を作りました。なぜ「遺伝的多様性や由来産地にこだわった保全が必要か?」「QRコードを使った個体管理法」などについて、判りやすく作ってあります。ご入り用の方はご連絡下さい。

環境研究総合推進費のパンフレットに紹介されました

 環境省が毎年に発行している環境研究総合推進費のパンフレットに、この研究が掲載されました。現在進められている148課題の中から16課題が紹介されているのですが、その中の一つに選んで頂きました。保全に取り組む市民の皆さまに判りやすい研究である故に選ばれたのかも知れません。残りの期間が少なくなってきましたが、見本となるような保全研究に仕上げていきたいものです。関係者の皆さま、引き続きよろしくお願いします。

植え戻されたアマミアセビの株の調査

 2016年10月28日、以前環境省と事前協議のうえで、野生復帰させたアマミアセビの株の生育調査を実施しました。
 今回、複数の場所で植え戻し株を確認することができました。

 ↑ ○で囲まれた部分に、植え戻したアマミアセビの苗が確認できます。全部で2株あります。

 ↑ ○で囲まれた部分に、植え戻したアマミアセビの苗が確認できます。全部で3株あります。

 ↑ 正面の○で囲んだ部分が、2012年に再導入したアマミアセビの株です。大きさは、40cm程度です。

 ↑ ○で囲まれた部分に、植え戻したアマミアセビの苗が確認できます。

 ↑ ○で囲まれた部分にアマミアセビの野生株があります。写真では少しわかりにくいですが、断崖の小さな岩棚に自生しています。

 ↑ 今回の調査で新たに発見した野生株の実生苗です。

 ↑ こちらも野生株です。上部には多数の蕾を確認できます。

 ↑ 今回、アマミアセビ株の調査に協力していただいた現地協力スタッフの前田さん(左)とボランティアとして参加していただいた東京大学医科学研究所の服部先生(右)です。

アマミアセビの新たな域外保全ネットワーク ― 宇検村立田検小学校にて ―

 平成28年10月26日に、奄美大島の湯湾岳近郊の宇検村立田検小学校の皆さんに、本プロジェクトの研究対象植物である「アマミアセビ」が譲渡されました。
 この「アマミアセビ」の株は、自生地(鹿児島県奄美大島)から採集され栽培されていたものを挿し穂でいただいて、研究協力機関である京都府立植物園にて、育苗していただいたものです。今回は、田検小学校および田検中学校で現存するアマミアセビの全遺伝型を網羅するため、田検中学校にない遺伝型をもつ46株を選択し、田検小学校の皆さんにお渡ししました。(このプロジェクトが開始した当初の2年前に田検小学校のお隣にある田検中学校の皆さんにも、アマミアセビの苗をお渡ししました。)

 アマミアセビを校庭の花壇に植える前に、京都大学の瀬戸口教授からアマミアセビのこれまでの保全活動について、京都府立植物園の長澤園長から今回お渡ししたアマミアセビを奄美大島内からどのように収集したかをお話ししました。

 瀬戸口教授より「どうしてアマミアセビは絶滅しそうになっているのか?」「なぜ、アマミアセビを奄美大島に植え戻す必要があるのか?」など、難しくなりがちなお話でしたが、みんな熱心に聞いてくれています。 ↓

↑ 長澤園長からは、今回育ててもらうアマミアセビを誰からゆずってもらったかなどが伝えられました。すると、譲ってくれた人やアマミアセビを保全している場所を知っている子供たちも多くいて、絶滅危惧植物であるアマミアセビがより身近に感じられたようでした。

 今回も、譲渡された「アマミアセビ」の株には、それぞれにQRコードのタグがついています。このQRコードの中には、植樹してくれた人がつけたニックネームなどが入力されています。
 このQRコードにスマートフォンをかざすと、この株がどこからきたのか、今どこにあるのか、今、この株のお世話をしてくれている人のニックネームなどが表示されます。

 次は校庭でアマミアセビの苗を植えていきます。

 まずは、苗を植え戻す時の注意点を説明します。
 写真中央でお話してされているのは、宇検村役場の藤さんです。今回も含めて、植え戻しの際に、多くのご尽力いただきました。↑

 長澤園長がどのように植えているのか、みんな真剣に見ています。↑

 今度は、自分の手で植え戻していきます。注意点を守りながら、慎重に植え進めます。↓

 植え終わったら水まきをして、任務完了です。↓

 上手に植え戻すことができました。↓

 背後に湯湾岳をのぞむこの場所で、アマミアセビの苗たちが、田検小学校の子供たちの手により、里帰りしました。↓

オオキンレイカ現地調査 ― 自生地へ植え戻された個体の確認 ―

 2016年10月10日、オオキンレイカの自生地へ、前年度に野生復帰させたオオキンレイカの株が現在、どのような状態にあるのか調査へ赴きました。

 西峰では、大きな個体と小さな個体が混在していました。
下の写真からもわかるように、周囲のロープがたるんでいます。また、株の周囲にかけた落ち葉(マルチング)も石の隙間から流出しています。↓

 そこで、写真のように周囲を囲むロープを張りなおして、株上部に再度、落ち葉でマルチングを実施しました。
また、この場所で、開花し、結実した個体が3個体あったので、種を回収しました。↓

 東峰では、南を向いた明るい場所に植えられた株は生育良好でしたが、陰に隠れた個体は、やや生育不良でした。写真では、今、開花中の個体、これから開花するであろう個体が確認できます。
ここも、結実した4個体があったので、種を回収しました。↓

 株周囲に雑草が多くみられたので、除草後、株周囲に落ち葉をかけました。↓

 これら野生復帰させた株に関しては、引き続き、追跡調査を実施します。

アマミアセビの域外保全集団づくり@田検小学校

 だんだんと、このプロジェクトの残り期間も少なくなってきました。奄美大島の固有種:アマミアセビの域外保全集団づくりを仕上げるために、今回は田検小学校の児童の皆さんと先生方、宇検村役場の皆さまにご協力頂きました。

 一本ずつの遺伝子型が異なる苗を47本定植しました。先生や用務員さんのお陰で、移植場所の土には予め、ピートモスを十分に漉き込んで頂きました。子供たちと先生に苗を植えて頂き、ニックネームを登録しました。苗は腐葉土とマルチ材できちんとカバーして、きっと元気に育つことでしょう。

 翌日に立ち寄った時には、当番の男の子達が水やりをしてくれていました。ありがとうございました。

アマミアセビ-自生地(奄美大島)での域外保全株の調査-

 平成28年2月18日により、奄美大島へアマミアセビの調査へ行きました。 今回の調査の主な目的は、昨年2月に奄美大島の湯湾岳の近くにある宇検村立田検中学校の皆さんに譲渡した「アマミアセビ」の生育状況を確認することと新たに株の補充を行うことでした。

 田検中学校を訪問させていただいた当日の天候は、雨。時折、台風のようなよこなぐりの強い雨に見舞われたにもかかわらず、田検中学校の教頭先生には、快く調査協力していただきました。

 まずは、譲渡株の生育状況と生育環境の調査です。 わずかに枯れているものもありましたが、花壇内に域外保全されたほとんどの株が元気に育っていました。

 いまでも、アマミアセビの株は、元気にそだっているのですが、更なる生育環境の改善を目的に、新たな土をまぜこむなどの土壌改良を行いました。
 作業していただいているのは、京都府立植物園の平塚さんと現地研究協力者の前田さんです。

 昨年譲渡した際に、アマミアセビ1つ1つにつけられていた簡易のQRコードタグを恒久のQRのコードタグと交換します。
1つ1つ異なるQRコードがつけられているので、添付間違いのように、慎重に確認していきます。万全を期すために作業は二人ペアで実施しました。
 確認作業をしているのは、京都府立植物園の中井さんと瀬戸口研究室研究員・服部です。

地道な作業ですが、確実に実施します。最終的には、このQRコードがそれぞれのアマミアセビの個体識別情報になるので。

去年譲渡された株全てが恒久QRコードタグに付け替えられました。

 個体識別情報が入力された恒久QRコードに付け替えたアマミアセビです。まだ小さな株ですが、既に蕾がついています。本来の自生地である奄美大島に戻ったアマミアセビは、田検中学校でしっかり根付き始めています。

 この作業の様子は、田検中学校が主催されているブログにも掲載されています。

キブネダイオウ現地調査

 2月初旬の2日間にわたり、京都府貴船川流域にて、キブネダイオウの生息個体数の調査および葉のサンプリングを実施しました。キブネダイオウは、環境省により絶滅のリスクが高い植物Ⅰ-B類に分類されています。

 今回の調査範囲は、貴船川上流からバス駐車場付近まで実施、今年は暖冬とはいえ、この貴船地域は、まだ、雪が残存しており、調査中も雪がちらほら舞っていました。

 新しく萌芽しているキブネダイオウと推測される個体です。 推測されると書いたのには理由があります。このキブネダイオウは、同じくこの地域に生育している帰化植物種のエゾノギシギシと交雑しやすく、純系のキブネダイオウではない可能性があるためです。

 純系のキブネダイオウとこのエゾノギシギシとの交雑個体は、外部形態上で判断することは難しく、その個体ごとに葉を採取して、その核内のDNA量を調べることによりキブネダイオウの純系であるかどうかを判断します。

 今回の調査の主な目的は、調査範囲にどの程度、純系のキブネダイオウが存在しているか、また、交雑個体はどの範囲でどの程度存在しているかを確認することにありました。

 発見したキブネダイオウの個体は、小さいものであれば、傷つけないように根から掘りおこし個体ごと保護、大きなものであれば、葉の一部を採取しました。そして、葉の一部を採取した個体には、再度、その場所を訪問したときに、個体を同定できるように、番号を記した目印を株そばに埋め込みました。

これは、大きな個体株であったので、葉の一部を採取して、そばに目印を埋め込みました。

 純系のキブネダイオウの絶滅リスクは、交雑の問題だけはなく、シカの食害も大きな問題になっています。この個体は、旅館の立つ崖下にありました。この崖下には、人は入ってくることはできませんが、この近くまで、遊歩道がのびています。人の往来が多い地域では、比較的、シカの侵入も少ないのか、シカの食害も少ないようです。

 ここは、貴船川の支流です。比較的多くのキブネダイオウの個体を発見することができました。ただし、この段階では、純系のキブネダイオウであるかの判断はできないので、各々の個体で葉の採取を実施しています。

 葉を採取した個体に目印を埋め込んでいます。黄色く見えるところに、サンプリング番号が記載されています。

 今回の調査では、キブネダイオウと推測される個体を、121個体発見しました。 このうち39個体を保護し、82個体の葉の採取をしました。これらの個体は、純系のキブネダイオウかを確認するため、全て、核内のDNA量を調べます。その解析結果により、純系と判断された個体のみ、交雑およびシカの食害を避けるため、一旦域外保全を行い、交雑個体はすべて駆除します。そして、将来的に、貴船川流域の生育可能な場所へ植え戻しを実施します。

オオキンレイカの野生復帰・2回目

 前回*1(平成27年10月18日)の子供たちの株の植え戻しに引き続き、平成27年11月15日に、オオキンレイカの自生地である福井県青葉山に株の植え戻し(野生復帰)を実施しました。

 今回植え戻した株も、自生地の青葉山から種を採集し(この種の採集は福井県より許可を得ています)、京都府立植物園で播種、育苗してもらった後、福井県高浜町の青葉山再生プロジェクトに賛同する成人有志の皆さんの手により大切に育てられたものです。

 この株の中から、分析した遺伝子情報をふまえて、22株を選択し、植え戻すことにしました。

 実際に植え戻されたオオキンレイカの株です。一つ一つ異なる遺伝子を持っているので成長に個体差があります。地上部がすでに落葉しているものもあります。

当日は、生憎の雨模様で足元も悪かったのですが、多くの協力者の方々に集まって頂きました。

尾根まで登っていきます。

野生のオオキンレイカです。
ほとんど垂直に近い斜面に自生しています。
植え戻す前に、植え戻す位置と手順の確認を行いました。

タグのQRコードと株のQRコードが一致しているか最終確認をしています。

植え戻されたオオキンレイカの位置関係を示した植え戻し図です。この植え戻しは、分析した遺伝子距離から判断して実施しています。
今回も里親になっていただいた皆さんの手によって、一株ずつ自生地である青葉山に植え戻していきました。

所定の場所に一株ずつ植え戻します。

植え戻した株のそばにQRコードのついたタグを差し込みます。
植え戻された(野生復帰した)オオキンレイカの株たちです。株のそばに見える白い札は、QRコードを印刷しているタグです。

 このQRコードのタグは植え戻したオオキンレイカの株ひとつひとつにつけられていて、その株に付帯する情報(育苗場所、育苗者、遺伝情報などその株の素性を明らかにするもの)を携帯電話で読み取ることができるようになっています。


植え戻した株の周囲に落ち葉をかぶせて*2、植え戻しの作業は終了です。

今回、植え戻しに協力していただいた高浜町の方々と瀬戸口研究室のスタッフです。お疲れ様でした。

 *1前回10月18日の植え戻しの様子は、「オオキンレイカの植え戻し」に記載しています。
 *2 株の周囲に落ち葉をかける理由は、「オオキンレイカの植え戻し」に記載しています。

オオキンレイカの野生復帰

 平成27年10月18日に、オオキンレイカの自生地である福井県青葉山にオオキンレイカの21株を植え戻し(野生復帰)を実施しました。 今回植え戻した株は、自生地の青葉山から種を採集し(この種の採集は福井県より許可を得ています)、京都府立植物園で播種、育苗してもらった後、福井県高浜町立内浦小中学校、青郷小学校のみなさんに譲渡し、学校の中で大事に育ててもらったものです。

 今回は、この株の中から、分析された遺伝子情報をふまえて、21株を選択し、植え戻すことにしました。

 この植え戻したオオキンレイカには、株一つずつにQRコードがついており、その株に付帯する情報(育苗場所、育苗者など株の素性を明らかにするもの)を携帯電話で読み取ることができるようになっています。

実際に植え戻しに使用されるQRコード
QRコードを読み取ったときに表示される画面
植木鉢番号 ニックネーム 備考
PTT011-002 かげオロチ 2013.10.21 青葉山にて種子を採取
2013.11.27 京都府立植物園にて播種
2014.9.24 栽培を委託
2015.10.18青葉山東峰に植え戻し

 まずは、植え戻す場所を目指して、みんなで青葉山を登りました。
植え戻したときにオオキンレイカにあげる水も一緒に持っていきます。

 植え戻す場所に到着しました。どこに植え戻すかは、
事前に作成していた遺伝的多様性(genetic diversity)を配慮した個体間の遺伝子距離を示した図に従って、実施します。

実際に使用した個体間の遺伝子距離を示した図


 植え戻す穴の位置を確認したら、植え戻しです。
今まで大事に育てたオオキンレイカを鉢から取り出して、地植えしていきます。

 地植えが終わったら、麓から運んできたお水をかけます。

 最後に、QRコードのついたタグを苗の根元に差し込みます。
これで、この株の親個体のこと(遺伝情報)、どこで育てられていたのか(栽培履歴)などがわかります。

 植え戻されたオオキンレイカの株です。それぞれに個体認識のためのQRコードのタグがつけられています。

 その後は、しっかり根付くように、落ち葉を集めて、根元のまわりに敷き詰めます。 オオキンレイカは、秋が深まるころには地上部が枯れて、根だけで雪深い青葉山の冬を越します。そのため、この敷き詰められた落ち葉が大切な役割をいくつか果たします。第一には、この落ち葉のおかげで、根の周囲の土壌の水分が蒸発せず、適度な水分保持をしてくれます。第二には、登山道で踏み固められ硬くなった土が、この落ち葉をすみかにしているミミズや微生物の働きでやわらかくなり、根の成長を助けてくれます。第三には、落ち葉そのものが腐葉土となり、植物にとっての肥料になります。第四には、雪深い中でもこの落ち葉が適度な保温効果を保ち、寒さから根を守ってくれます。 そのため、植え戻されたばかりの植物に落ち葉のかけてあげることは、とても大切なことです。

 そうして、雪が溶けて、春になるころには、新しいオオキンレイカの芽が地表へと顔を出すことになることになります。

 実際に、域外保全していたオオキンレイカが植え戻された場所です。

 植え戻されたオオキンレイカの株のそばに看板をたてました。。

福井新聞 2015.10.23

高浜の子供たち、ボランティアの皆さんと「オオキンレイカ」*の植え替えをしました。

 2015年5月25日に、福井県高浜町立内浦小中学校と青郷小学校、社会人ボランティアの皆さんと「オオキンレイカ」の植え替えをしてきました。

 昨年9月に「里親」になっていただいた皆さんに育まれて大きくなった苗を、一回り大きな植木鉢に植え替えました。また、お猿さんに持って行かれたりして無くなった苗を追加補充しました。

 今回、株を寄贈された小学生の皆さんは、京都府立植物園の平塚・肉戸技師からオオキンレイカの育て方を教わりながら、鉢に株を植え替えていきました。昨年、オオキンレイカの株を受け取った子供たちは、オオキンレイカが枯れないようにがんばって水やりをしてくれています。このように、里親の方に大事に育てられている株は、最終的には今秋自生地へ植え戻すことを目標としています。

バーコード情報の貼付

福井新聞 2015.5.25. 日刊
*「オオキンレイカ」は、野生種絶滅を避けるため、自生地にて種を採取し、
本プロジェクトの研究協力機関である京都府立植物園にて育苗されていた株です。

アマミアセビの域外保全ネットワークの作成

 平成27年2月23日に、奄美大島の湯湾岳の近くにある宇検村立田検中学校の皆さんに、本プロジェクトの研究対象植物である「アマミアセビ」が譲渡されました。

 この「アマミアセビ」の株は、自生地(鹿児島県奄美大島)から集めた枝の挿し穂株で、研究協力機関である京都府立植物園にて育苗していただいたものです。今回はその株の中から様々な由来の100株を田検中学校の皆さんに譲渡しました。

 田検中学校の3年生の皆さんは卒業の記念植樹として、下級生の皆さんには里親として、面倒を見てもらいます。ここで種子が実ったら、学校から見える湯湾岳に蒔いてもらうことになるでしょう。

 多くの生徒さんは、高校を卒業すると島外に出てしまうそうです。お盆などの帰省の折にでも母校に立ち寄って、自分が育てたアセビのQRコードを読み取って、「あっ、自分のだ、大きく育ったな」とか「友人の植えたものだ」と思い起こしてくれれば良いなと思います。

 この域外保全ネットワークを地域社会で作る良いところは「植え手良し(記念植樹)、地域良し(景観回復)、植物良し(絶滅回避)」の三方良しであることです(近江商人みたいですが)。

 これまでに、湯湾岳の山の中:指定地域外に「アマミアセビ」220株を植え戻しました(環境省自然保護局野生生物課と協議のうえです)。大和村の名音小学校に25株、そして田検中学校に100株、合計345株が、もと自生地のちかくに戻ってきました。


京都府立植物園の樹木係の中井さんです。

 譲渡された「アマミアセビ」の株には、それぞれにQRコードのタグがついています。このQRコードの中には、差し穂を採取した親木の情報、栽培履歴、植樹してくれた人の公開可能なニックネームなどが入力されています。このQRコードにスマートフォンをかざすと入力されているこれらの情報を読み取ることができます。

 課外授業の中で、「アマミアセビ」のような希少植物が、なぜ、個体数を減らし続けているのか、域外保全の必要性、自生地へ植え戻すことの意義を瀬戸口教授より、「アマミアセビ」の特徴や栽培方法を京都府立植物園・長澤園長より、田検中学校の皆さんに説明させて頂きました。


田検中学校の皆さんが、長澤園長の話を熱心に聞いてくれています。

 田検中学校の皆さんの手によって、校門横に「アマミアセビ」が植え戻されている様子です。

 中学生の皆さんからは、「自分が植えた貴重な木を大事に育てたい。」「将来、仕事をするため島を離れても、中学校によって自分の木が育つのを見ていきたい」等の感想がありました。


みんなで植えます。先生も参加して下さりました。

出典:南海日日新聞 2015年2月24日 日刊

アマミアセビの新たな域外保全

 2015年の2月に奄美大島南部で、地元の方のお庭を拝見してまわりました。

 自宅でアマミアセビを育てて居られる場合には、枝を少しずつ採取させていただき、域外保全のコレクションに加えさせて頂きました。地元の皆様のご協力で、域外保全の対象個体数が着実に増えていきます。でも、このように一軒一軒を訪問していくのはなかなか地道な作業です。

  様々な植物を上手に育てて居られます。目的を忘れて、皆から思わず「ええなぁ~」と歓声が上がります。
 しかし仕事も忘れずに、挿し穂も頂いていきました。長澤園長が採取している挿し穂は、いま京都府立植物園で間欠ミストを受けて育成中です。

 立派な鉢植えも作って居られました。お見事な技術を持ちです。この株からも、少しだけ、枝を分けて頂きました。

チチブイワザクラの保全

 11月17日に横浜国立大学の倉田薫子准教授と大学院生の山本将也さんとともに、埼玉県の武甲山でチチブイワザクラの域外保全を進めておられる2社(1社では横瀬町の植物園として管理がされています)を訪問させて頂きました。両社と植物園の関係者にお礼を申し上げます。

 最初に訪問した会社では、昨年度に関東地方を襲った大雪で壊れたビニールハウスを建て替えている最中でした。チチブイワザクラはちょうど冬芽を作って、休眠に入っていました。今度の春に、DNA解析をさせていただきます。

 午後に訪問した会社では、倉田先生がデータロガーを回収(設置場所が崩れてきた)するとともに、会社のご好意で採掘場を上から見させて頂きました。ちょうど、チチブイワザクラが生えていた標高1000m付近にあたります。

 きっと将来、この辺りにチチブイワザクラが戻ってくるのだと思います。それまでに、域外保全株が良い状態で世代を更新し、かつ遺伝的な質も良い状態で増殖していることを願っています。保全に関わっている全ての方々の思いが実現するように、このプロジェクトが少しでもお役に立てればと思います。

「オオキンレイカ」譲渡式

 9月24日、福井県高浜町にて、同町の小中学生の皆さんおよび一般の方々へ、本プロジェクトの研究対象植物である「オオキンレイカ」の譲渡式が行われました。

 この「オオキンレイカ」の株は、自生地(福井県青葉山)での野生種絶滅を避けるため、自生地にて種を採取し、本プロジェクトの研究協力機関である京都府立植物園にて育苗することで域外保全をされていたものです。

 今回、その保全されていた株の中から、105株の「オオキンレイカ」を高浜町教育委員会との共催で、小中学生の皆さんおよび一般の有志の方々へ譲渡し、株の里親になって頂きました。今度は、里親となっていただいた方々の手により、「オオキンレイカ」の本来の自生地にて保全されることになります。

バーコード情報の貼付
出典:毎日新聞 2014.9.25 日刊
バーコード情報の貼付
出典:福井新聞 2014.9.25 日刊

 譲渡式では、これから里親として「オオキンレイカ」を育てて頂く小中学生および地元の方々に対して、「オオキンレイカ」のような希少植物が、今、なぜ個体数を減らして続けているのか、なぜこのような方法(バーコードを使用した管理作業)で保全する必要があるのか、また、最終的には、里親となって育てた「オオキンレイカ」を本来の自生地である青葉山へ植え戻していくことなどを、瀬戸口教授より説明させて頂きました。

バーコード情報の貼付
小中学生を対象に説明しています。
バーコード情報の貼付
一般の方を対象に説明しています。

オオキンレイカ研究活動状況

バーコード情報の貼付

 昨年の10月に福井県から特別に許可を受けて青葉山のオオキンレイカの種子を採取しました。その芽生えが京都府立植物園の職員の方々のお世話によって立派に育ちました。

バーコード情報の貼付

 今年の9月24日に福井県高浜町教育委員会の主催で、子供たちと一般の希望者に「里親」になって頂く譲渡式を行います。「オオキンレイカ」の苗は、全部で105個体あり、すべてにバーコードを貼付されています。

バーコード情報の貼付

 バーコードによる情報管理により、種子を採取した母親個体の情報、個体の遺伝子型、京都府立植物園の職員の方に育成されたこと、そののちに「オオキンレイカ」を手渡された方(この個人名は非公開です)がトレースできるようにしてあります。

 大きく育ったのちに将来に山に植え戻されたり、植物園で域外保全に使われたる際にもこのバーコードに情報が履歴として付加されていきます。実際の試行の第一号なので、これで改善点などを見つけては改良していきたいと思います。

バーコード情報の貼付

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